韓国朝鮮の楽器の歴史
この論考により、韓国朝鮮の芸能、特に音楽、特に楽器の歴史を通して韓国朝鮮の現代にまで通じる歴史の把握を、主に文献を調べて試みる。何故韓国朝鮮なのか。日本の歴史の形成を成した中で隣国との関係は今現在緊張関係にあり問題視されている。相互文化理解が大切である時に、敢えて韓国朝鮮の芸能音楽文化の小論を試み書いてみる。
大きく韓国朝鮮の楽器を「打つ」「吹く」「弾く」に大別できる※1。打つ楽器には四物(サムル)と呼ばれる杖鼓(チャンゴ)、プク(太鼓)、チン(銅鑼)、クェンガリ(小鉦)がある。吹く楽器には大琴(テグム)、中琴(チュングム)、小琴(ソグム)という三竹(サムチュク)、短簫(タンソ/トンソ)、ピリ(縦笛)やチョッテ(横笛)、太平簫(テピョンソ)がある。弾く楽器には後に日本に伝わる新羅琴である伽耶琴(カヤグム)、玄琴(コムンゴ)、郷琵琶(ヒャンビベ)などの三絃(サメン)や奚琴(ヘグム)、牙琴(アジェン)がある。:以上※1・※2より:注1。韓国上古時代、全土に広がった農楽(プンムル:ノンアク)を除くと、蔚山広域市大谷里の盤亀台岩刻画、慶尚南道金海市の亀旨歌、済州島のチルモリ堂霊登祭、全羅道のカンガンスルレなどの歌舞には地域的な特性があった※2。新羅や高句麗などの統一時代、ハングルが制定された李王朝の朝鮮時代になるに従って、その地域的な特性の偏りは解消されていったのではないか。例えば処容(チョヨン)、郷楽(ヒャンアク)、カシリやパンソリ※2といった時代性による流行の問題になってゆく。例えばパンソリとは歌・セリフ・身振りを併せて物語る韓国の代表的な芸能で、パンとは場や舞台、ソリとは曲の意味で歌曲の意味がある※2。パンソリは音楽性の強い口誦文学、劇詩であるとも言える※2。パンソリには鼓主が必要である※2。伽耶琴は12弦の箏であり、現代の韓国のお子さんのお稽古事の花形である※1。伽耶琴はそこから新羅に移り、宮廷音楽に摂取されていった※1。このことをみても地域的な特性が統一と共に全土に広がり薄らいでいった様子がわかる。新羅琴の他に百済琴、や高句麗琴であるとみられる玄琴(コムンゴ)がある※1。
K―POPや韓流時代劇、韓流ドラマなどの韓流文化の時代であり、韓国の食品文化なども流入している時代でもあるが、韓国の伝統音楽や文化の良さがある。翻って日本の状況をみるとJ―POPの時代でもあるが、日本の民族音楽も大切であることに気付かされる。日本人が日本人であるためには、そうしたアイデンティティが大切であること。加えて多様な民族文化を広く理解すること。そのためには芸能や音楽は良い媒体である。韓国朝鮮の楽器についての小論を試みたが、まだまだ奥の深い事項が数え切れぬほどあると感じる。政治的な交流が途絶える中、せめて文化交流から相互交流・理解が深まることを願い祈る。この小論からも韓国朝鮮文化は決して敵視すべきものではなく日本文化とも関係の強い民族性豊かな魅力ある文化であると思われる。朝鮮のシンボルである映画音楽「アリラン」※1に植民地支配への反発がみられるように、日本が過去に犯した過ちに対する反省がまずあるべきだと考える。
参考文献:
※1:「韓国音楽探検」(音楽之友社)植村幸生
※2:「朝鮮半島、インド、東南アジアの詩と芸能」(藝術学舎)
注1: Facebook(松岡祐貴(lucanust))より。
以上をサイトhttps://www.lucanust-angle.comで掲載。